2007.03.17

ツラいなぁ…

岩手競馬が廃止の方向へ向かうようです。
岩手日報テレビ岩手バックアップ映像IBC特番@ようつべ

盛岡で10年生活して、上司が岩手競馬関連の仕事をしていた会社に勤務していた者としては、何とも複雑な思いです。
確かに僕も年に数回行くくらいで大して貢献もしてなくて、何か言える身分ではないのでしょうが、それでもやはり寂しいし、悔しいし。
騎手や調教師、厩務員や馬券売場のおばちゃん、屋台村や場外駐車場(水沢)で働いてる人たち、予想紙の記者さん(『テシオ』の松尾さんとかどーすんだろ…)、そして観客のオッサンやおばちゃんや家族連れ…そんな人たちの姿が頭の中に浮かんできます。そういえば以前訪れた上山や宇都宮にいた見るからに競馬好きなオッサンたちは今、何を楽しみに生活してるのでしょうね…
トウケイニセイやメイセイオペラに続くスターホースがなかなか生まれなかったことが痛かったのかな?とも思うけど、何だかんだ言ってもなくなるこたぁねえだろという慢心・油断も確かにあった。そして時代の変化の中で“地元発の文化”であった筈の岩手競馬を住民が愛しきれなくなってきた…それはJRAの影響だったりパチンコ産業の隆盛だったりショッピングのエンタテインメント化だったりするんだけど…のが決定打になったのかな。自分だって仕事で岩手競馬に関わるようなことがなかったらずっと無関心だったろうし。今でも鮮明に憶えてるのは、岩大あたりの学生ぽく見えたんだけど、目の前であったメインレースには関心ナシで、その直後に大型ビジョンでJRAの中継映像(京都だったと思うけどレース名は忘れた)が流れたときにファンファーレに合わせて手拍子して盛り上がってる集団がいたことで、その感性を心から疑ったと同時に、こういう連中に“生の素晴らしさ”を教えていかないとヤバいと思ったのだけど、そういう危機感を組合としては持っていなかったんだろうか。収支云々もさることながら“文化”“ライヴ”としての岩手競馬を広めていく努力が足りなかった気がするし(これは組合だけでなくメディア側も責任を負うべき)見る側としても“(長い目で)見守る”という考え方が欠けていたと思う。
それにしても、存続するためには岩手県+盛岡市+奥州市による330億円の融資が必要で、廃止するにしても何やかやでそれに近いorそれ以上の支出は確実で(経済効果的観点での損失も加わってくる!)金銭面での県民負担は大差ないものなのに、こういうハードランディングな決着で果たして良かったのかどうか。奥州市は市単独での開催を模索するようですが、資金的にかなりキツいことは間違いないし、旧水沢市以外の各地域(旧江刺市・前沢町・胆沢町・衣川村)に納得してもらえるかも大きな問題。個人的にはとにかく07年度は現在予定されてる日程に近い形でせめて08年1月までは実施してほしい。その間に盛岡はJRAに売却+水沢は奥州市主催で存続+テレトラックは両競馬場併設以外は全て閉鎖あたりを基本線に、加えて他競馬へ移籍する騎手・調教師・厩務員については特例を発令して“下積み”免除できるように働き掛けてほしい。最低でもソフトランディングさせること、できれば何らかの形で“岩手での競馬”が存続できることを念頭において組合は動いてほしい。そして県民も「岩手に競馬があること」の意味を考えてほしい。他力本願で申し訳ないけど、とにかく今はそれを切に願います。

19日に岩手・南関東交流レースが浦和であるんだけど、仕事で行けなさそう…う〜ん、これまた悔しいなぁ。

2004.10.20

地方競馬をどうするつもりだ?

高崎に続いて宇都宮競馬も廃止の方向へ。足利競馬廃止からわずか2年で北関東3場が全て廃止されてしまうのか?
中京地区でも笠松が年内廃止へまっしぐら、来年JBCを開催する名古屋競馬も雲行きは怪しいようだ。
2006年度までは水沢・盛岡2場体制での存続が確定している岩手競馬も、廃止をタブーとしない論議が続いている。
「地方競馬は南関東4場(大井・浦和・船橋・川崎)以外なくなるのでは?」そんな声も少なくない。

2001年6月の大分・中津競馬廃止から、堰を切ったように地方競馬の廃止が相次いでいるように思う。
2002年1月、新潟県競馬(新潟・三条)。
2002年8月、島根・益田競馬。
2003年3月、栃木・足利競馬。
2003年11月、山形・上山競馬。
見落としがあったらご容赦いただきたいが(さすがに時期はネットで検索)、さほど競馬事情に詳しくない僕でさえこれだけの廃止を知っているのだ。
確かに赤字を抱えている競馬事業は、それを管轄する地方自治体にとってはお荷物以外の何者でもないとは思う。競馬全体の人気が中央競馬(JRA)に集中(というか偏重)してるという状況もある。かつて盛岡競馬場で若者の一団がメインレースより京都競馬場のG1(何のレースかは忘れた)の中継で盛り上がるというあり得ない光景を見たこともあるし。

それでも地方競馬は必要だ、と思う。極端な話、たとえ赤字をたれ流し続けるとしても。

岩手に住んでいたおかげで、水沢と盛岡という全く違う性格の二つの競馬場を体験することができた。
オーロパーク(盛岡)はとにかくキレイで明るくて近代的。一方でバブリー感も強くて、そりゃこんなのこさえたら大赤字にもなるわなぁ、と。水沢は古き良きというか…要するにボロい(^^;;。でも、厩舎団地のにおいとか駐車場前に佇むおばちゃんの姿とかが素朴で、印象に残ってる。
もしも競馬がなくなったら、ここに集ってるオッサンやおばちゃん達はどこへ行くんだろう?
生活云々と言うより、娯楽が奪われてしまうことの影響をまず僕は心配する。

もう一つ、「地方からの情報発信」という点で、競馬は良好なコンテンツになりうるのではないかということ。
岐阜県知事はオグリキャップや安藤克己を輩出した笠松競馬を誇りに思わないのか。笠松から“(オリジナルの)情報”を全国に向けて発信していることに気付かないのか。
岩手競馬は“悲劇の女王”ホクトベガ、“初の地方G1馬”メイセイオペラを中央に、世界に送り出した。北上川大賞典でメイセイオペラがぶっちぎりで勝つ姿を目の当たりにして(あー、ピークは過ぎても中央G1で勝った馬は違うのね)とため息つきつつ味わった優越感。サッカーのJ2やJFLにも共通してると思うが、自分がかつて間近で見た馬が中央で活躍する姿を見るのって結構気持ちいいものである。その逆もあるだろう。その感覚こそが“地方発の情報”であり、それが文化なりビジネスなりに化ければおいしい話にもなるってモンだ。そういう情報の発信源を自ら閉じてしまってどーすんだ。

あと、たとえ小規模であっても「ライブで体感できる場所」をなくしてほしくないって思いもある。またJ2を比喩に使うけど、たとえ2部でもJリーグはJリーグなのよ。この前の三ツ沢で痛切に感じた。で、そういう場所(三ツ沢みたいな小さいトコ)で見たっていう経験は国立や味スタみたいなデカいトコで見る時に必ず生かされるから。だってさ、中山競馬場行った時にあまりの広さに呆然としたけど、盛岡行ってなかったらそれどころじゃなかったもん、絶対。で、そういうのってその人の「心の豊かさ」にも繋がるんじゃないかな。勿論、自分の心が豊かとはとても思えませんけど(^^;;

どんな分野でも、始めはチャチに見えてもやがて大化けする物事って必ずあるモンだ。
その可能性を秘めた地方競馬の灯を安直に「赤字だから」「ギャンブルはイメージ悪いから」と言って消してしまうのは、地方自治体が自分の首を絞めていることに等しい。
せっかくの“自前のコンテンツ”である。安易に捨てるのではなく、育てる努力をしてほしい。切に思う。